発達障がいや学習障がいをもつ子どもにIT機器を与えて学習支援をする「DO-IT Japan」など、革新的な活動を続ける中邑賢龍さんの言葉をお借りしながら、公立学校の限界はありながらも、「親から授かった特性のまま、もっと人が自然に生きていける学校、社会をつくろう」としている、ある市立小学校での実践を紹介する。

みんなが好きなことをして生きていける社会をつくっていこう

親から授かった特性のまま、もっと人が自然に生きていける社会をつくろう。

『芸術家は気難しい』

 1年生の担任(通常学級担任)が話をしている途中、Aさんは、お気に入りのペンを取りに行くため、立ち歩いている。周りの子どもたちは、立ち歩いているAさんに気づいているかどうかは分からないが、担任の先生の話を聞いている。自分のペンがあるのだが、担任が学級の子どもたちが使うように用意したペンが、Aさんはお気に入りで、ほとんどそのペンを使っている。自分のペンを使うように持っていっても、ゆっくり振り払われる。

 支援学級担任が「画伯」と呼んでいるぐらい、Aさんは絵を描くのがうまい。言葉を発することはほとんどないが、文字をなぞるのは得意だ。だが、担任の指示どおりになぞることはなく、支援の先生が、そばで声をかけるなどして促しても、その通りにすることはほとんどない。

 なるべく周りの子どもに迷惑がかからないように支援しながら、多少の我慢はさせつつ、自分なりのペースで絵を描いたり、ひらがなをなぞったりしている。できるかぎり、好きなことをしていられるような環境を整えることが支援者の役目だと考えて支援している。

『自然に生きていけるように』

 担任と相談してAさんの席は一番後ろにして、自由に動けるスペースを確保している。

多様性を当たり前に

 「なぜ、Aさんだけ、立ち歩いていてもしかられないの?」「Aさんだけ絵を描いているの?」という問いに担任を含め、周りの大人がどう答えていくかを週明けに相談する予定である。 

    



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